44 逢ふことの絶えてしなくはなかなかに 人をも身をも恨みざらまし
中納言朝忠・藤原朝忠
公家・歌人。三条右大臣・藤原定方の五男。三十六歌仙。従三位・中納言。土御門中納言または堤中納言と号する。
現代語訳
あなたと会うことが絶対にないのならば、かえって、あなたのつれなさもわたしの身の不幸も、こんなに恨むことはないのに。(あなたに会ってしまったばっかりに、この苦しみは深まるばかりです)
文法・語
「逢ふ」-男女関係を結ぶこと。この場合、作者個人の男女関係(あの人との関係がないならば…)とする説と男女関係の存在自体(男女関係がこの世に存在しないならば…)とする説がある
「の」-主格の格助詞
「絶えて」-下に打消の語をともなう呼応の副詞で、「絶対に…ない」の意。「し」-強意の副助詞
「なく」-ク活用の形容詞で、係助詞「は」をともなって、「なくは」となり、「…ないならば」という反実仮想を表す
「なかなかに」-副詞で、かえって・むしろの意
「も」-並列の係助詞
「ざら」-打消の助動詞「ず」の未然形
「まし」-反実仮想の助動詞