59 やすらはで寝なましものをさ夜更けて かたぶくまでの月を見しかな


女流歌人。大隅守・赤染時用の娘。中古三十六歌仙・女房三十六歌仙。

現代語訳
あなたが来ないと知っていたら、ためらわずに寝てしまったのに。お待ちしているうちに、夜も更けて、とうとう西に傾く月を見てしまいました。

文法・語
「やすらは」-ハ行四段の動詞「やすらふ」の未然形で、ためらう・ぐずぐずするの意
「で」-打消の接続助詞
「な」-完了の助動詞「ぬ」の未然形
「ものを」-逆接の接続助詞。「寝なましものを」で、「もし~であれば寝てしまったであろうに」の意
「さ」-接頭語
「かたぶく」-月が西に傾くことで夜明けが近付いたさまを表す
「まで」-限定を表す副助詞
「かな」-詠嘆の終助詞