63 今はただ思ひ絶えなむとばかりを 人づてならでいふよしもがな


公卿・歌人。儀同三司伊周の長男。一条天皇皇后定子の甥。

現代語訳
今となっては、ただあなたへの思いをあきらめてしまおうということだけを伝えたいのだけれど、人づてではなく直接お目にかかってお話しする方法があればなあ。

文法・語
「今」-後拾遺集の詞書によると、(伊勢)神宮の斎宮(未婚の皇女。恋愛は厳禁であった)を勤めて帰京された当子内親王のもとに道雅が通っていたことが発覚し、天皇が内親王に監視を付けて逢えないでいる状態だった
「ただ」-下に限定の副助詞「ばかり」を伴い、「ただ…だけ」の意
「思ひ絶ゆ」-思い切る・あきらめるの意
「な」-完了の助動詞「ぬ」の未然形で強意を表し、~てしまうの意
「む」-意志の助動詞
「と」-引用の格助詞
「で」-打消の接続助詞
「よし」-方法
「もがな」-願望の終助詞で