89 玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば 忍ぶることの弱りもぞする
皇女、賀茂斎院である。新三十六歌仙、女房三十六歌仙。後白河天皇の第3皇女。母は藤原成子。(藤原季成の女)
現代語訳
我が命よ、絶えてしまうのなら絶えてしまえ。このまま生き長らえていると、堪え忍ぶ心が弱り秘めている思いが人に知られてしまいうから。
文法・語
「玉の緒」-玉を貫き通す糸。ここでは、自分の命
「よ」-呼びかけの間投助詞
「絶えなば」-ヤ行下二段の動詞「絶ゆ」の連用形+完了の助動詞「ぬ」の未然形+接続助詞「ば」で、順接の仮定条件を表し、「絶えるならば」の意
「ね」-完了の助動詞「ぬ」の命令形
「絶えね」-絶えてしまえの意
「ながらへば」-ハ行下二段の動詞「ながらふ」の未然形+接続助詞「ば」で、順接の仮定条件を表し、「生きながらえるならば」の意
「忍ぶる」-我慢する・耐え忍ぶの意
「の」-主格の格助詞
「も」・「ぞ」-強意の係助詞。「もぞ」で、~すると困るの意
「する」-サ変の動詞「す」の連体形で「ぞ」の結び。「よわりもぞする」で弱ると困るの意
※二句切れ