84 長らへばまたこのごろやしのばれむ 憂しと見し世ぞ今は恋しき
公家・歌人。藤原顕輔の次男。正四位下・太皇太后宮大進。
現代語訳
もしこの先生きながらえるならば、今のつらいことなども懐かしく思い出されるのだろうか。昔は辛いと思っていたことが、今では懐かしく思い出されるのだから。
文法・語
「長らへば」-下二段の動詞「長らふ」の未然形+接続助詞「ば」で順接の仮定条件を表し、「もしも、生きながらえるならば」の意
「や」-疑問の係助詞
「しのば」-バ行四段の動詞「偲ぶ」の未然形で、懐かしく思うの意
「れ」-自発の助動詞「る」の未然形
「む」-推量の助動詞「む」の連体形で「や」の結び
「憂し」-つらい
「と」-内容を示す格助詞
「し」-過去の助動詞「き」の連体形
「ぞ」-強意の係助詞
「は」-区別を表す係助詞
「恋しき」-シク活用の形容詞「恋し」の連体形で「ぞ」の結び