14 陸奥のしのぶもぢずりたれゆえに 乱れそめにしわれならなくに
嵯峨天皇の十二男。極位極官は従一位左大臣。六条河原院を造営したことから、河原左大臣(かわらのさだいじん)と呼ばれた。
現代語訳
陸奥の信夫(しのぶ/現在の福島県信夫郡)で作られるという「しのぶもじ摺り」の布の乱れた模様のように、わたしの心も乱れてしまった。いったい誰のためにこのように思い乱れているのでしょう。 (きっとあなたの所為に違いありません)
文法・語
「陸奥(みちのく)」-白河関以北の地。現在の福島・宮城・岩手・青森の4県にほぼ相当する地域
「誰ゆゑに」-誰のせいで。「誰ゆゑに」の後に続くはずの疑問・反語の係助詞(終助詞とする説もある)が省略されている
「そめ」-「染め」と「初め」の掛詞。「乱れ」と「染め」は「もぢずり」の縁語
「し」-過去の助動詞の連体形。本来あるはずの疑問・反語の係助詞と係り結びとなるため、終止形ではなく連体形となっている
「な」-上代(奈良時代以前)に用いられた打消の助動詞
「く」-その接尾語
「に」-詠嘆の意味を含む逆接の接続助詞。終助詞とする説もある
※倒置法