35 人はいさ心も知らずふるさとは 花ぞ昔の香に匂ひける
紀貫之
歌人。『古今和歌集』の選者。三十六歌仙。
現代語訳
さて、あなたの心は昔のままであるかどうか分かりません。でも、なじみのこの里では、昔のままに梅の花の香りが匂っていますね。
文法・語
「は」-区別を表す係助詞。「人は」に対応する句で相手のことを指している
「花」-一般には桜であるが、この場合は「香ににほひ」とあり「梅」の意
「ぞ」-強意の係助詞
「にほひ」-「にほふ」の連用形で、平安時代には嗅覚だけでなく視覚の美しさも表す
「けり」-詠嘆の助動詞「ける」の連体形で「ぞ」の結び
※「花の香は今も昔も同じであるが人の心変わりやすく、あなたの心もわからない」という内容であるとする説もある