97 来ぬ人を松帆の浦の夕なぎに 焼くや藻塩の身もこがれつつ
公家・歌人。正二位・権中納言。父は藤原俊成、母は美福門院加賀(藤原親忠女)、子に藤原為家。小倉百人一首の撰者。
現代語訳
いくら待っても来ない人を待ち続けて、松帆の浦の夕凪のころに焼く藻塩が焦げるように、私の身もいつまでも恋こがれています。
文法・語
「来(こ)」―カ変の動詞「来(く)」の未然形
「ぬ」―打消の助動詞「ず」の連体形
「まつ」―「待つ」と「松帆の浦」との掛詞
「夕なぎに」―夕方に海風から陸風にかわるときに起きる無風状態
「や」―詠嘆を表す間投助詞
「藻塩」―海水を滲みこませた海藻を焼き、水に溶かして煮詰め、精製した塩
「こがれ」は―「藻塩」が焼け焦げることと、「(わが)身」が恋い焦がれることを掛けている
「つつ」―反復の接続助詞
※「焼く」「藻塩」「こがれ」は縁語
※本歌取
松帆の浦 MAP
兵庫県淡路島北端にある海岸