23 月見ればちぢにものこそ悲しけれ わが身ひとつの秋にはあらねど
大江千里
学者・歌人。正五位下・式部権大輔。中古三十六歌仙の一人。
現代語訳
月を眺めていると色々なことが思い起こされ物悲しいことです。秋はわたしひとりだけにやって来たのではないのですが。
文法・語
「見れば」-「動詞の已然形+接続助詞“ば”」で、順接の確定条件。「月を見ると」の意
「ちぢに」-「千々に」で「さまざまに」の意。後の「一」と対照
「もの」-「物悲しい」の「物」で、「自分をとりまくさまざまな物事」
「こそ」-強意の係助詞
「悲しけれ」-形容詞の已然形で「こそ」の結び
「一つの」-私一人だけの。本来は、「一人」であるが「千々」に対応させるため「一つ」となっている
「に」-断定の助動詞
「は」-強意の係助詞
「あら」-ラ変動詞「あり」の未然形
「ね」-打消の助動詞「ず」の已然形
「ど」-逆接の確定条件を表す接続助詞で「~けれども」の意
※倒置法