現代語訳
心ならずも、つらいこの世に生きながらえていたならば、きっと恋しく思い出すにちがいない、この夜更けの月であるなあ。
文法・語
「心」-本心・本意
「に」-断定の助動詞「なり」の連用形
「で」-打消の接続助詞
「うき世」-はかない世・つらい世の意
「ながらへば」は、動詞の未然形+接続助詞“ば”で、仮定条件を表し、生きながらえたならばの意
「べき」-当然を表す推量の助動詞で~はずだの意
「夜半」-夜中・夜更け
「かな」-詠嘆の終助詞
※『後拾遺集』の詞書によると、この歌は、三条天皇が眼病で失明寸前、藤原道長によって皇位を奪われる前年に詠まれた歌ということである。また、目以外の体調もすぐれず、内裏が二度も炎上するなど、絶望的な状況に陥られていた。そのため、「心ならずも生きながらえていたならば…」などという悲劇的な御製を残されることとなり、三条天皇はこの歌を詠まれた翌年に譲位され、さらにその翌年崩御された