31 朝ぼらけ有明の月と見るまでに 吉野の里に降れる白雪
坂上是則
官人・歌人。従五位下・加賀介。三十六歌仙の一人。
現代語訳
夜が明ける頃、辺りがまるで有明の月が照らしているのかと思うほど明るく、吉野の里には白雪が降り積もっているではないか。
文法・語
「朝ぼらけ」-夜が明けてきてほのかにあたりが明るくなってくる頃
「有明の月」-夜更けに昇ってきて、夜明けまで空に残っている月のこと。満月を過ぎた十六夜以降の月
「みる」-「見る」ではなく「思う」とか「判断する」の意
「まで」-極端な程度を表す副助詞で「思うばかりに」の意
「る」-継続を示す助動詞「り」の連体形
※体言止め
吉野の里 MAP
吉野は、大和国(現在の奈良県吉野郡)吉野のあたり一帯。平安時代には、春は桜、冬は雪の名所として知られる山里だった。