52 明けぬれば暮るるものとは知りながら なほ恨めしき朝ぼらけかな
藤原道信朝臣
公家・歌人。太政大臣・藤原為光の三男。中古三十六歌仙の一人。
現代語訳
夜が明ければやがてはまた日が暮れて、あなたに会えるものだと分かってはいても、やはりあなたと別れる夜明けは、恨めしく思うものです。
文法・語
「ぬれば」-「助動詞の已然形+接続助詞“ば”」で順接の確定条件
「ば」-恒時条件を表し「…と,…といつも」の意。「明けぬれば」で男が女の家から帰る時が来たことを表す
「と」-引用の格助詞
「は」-強意の係助詞
「ながら」-逆接の接続助詞
「なほ」-「そうは言うものやはり」の意味の副詞
「朝ぼらけ」-夜がほのぼのと明けるころ。秋または冬に用いられる
※『後拾遺集』には「女のもとより雪降り侍る日帰りてつかはしける」とあり、雪の降る朝に女の家から帰った男が、一人さびしく詠んだ後朝の歌であることがわかる