9 花の色は移りにけりないたづらに わが身世にふるながめせしまに
小野小町
六歌仙、三十六歌仙、女房三十六歌仙の一人。
One of the six Poetry Immortals, the Thirty-six Poetry Immortals, and the Thirty-six Poetry Immortals of woman.
現代語訳
春の長雨が降る間に、桜の花の色がずいぶんと色あせてしまった。同じように、恋に思い悩み、むだに長雨を眺めながらぼんやり暮らしているうちに、私の美貌も衰えてしまった。
While a long spring rain, the color of cherry blossoms has faded very much. In the same way, while I have lived idly looking at a long rain, worrying in love, I have lost my looks.
文法・語
「花」-「花」のみの場合古典では「桜」を意味する。女性の容色もたとえている
「うつる」-色あせる・衰える
「な」-感動の助動詞
「いたづらに」-形容動詞「いたづらなり」の連用形
「世」-「世代」という意味と「男女の仲」という2重の意味が掛けてある掛詞
「ふる」-「降る(雨が降る)」と「経る(経過する)」の掛詞
「眺め」-「物思い」という意味と「長雨」の掛詞
※二句切れ・倒置法