24 このたびは幣も取りあへず手向山 紅葉の錦神のまにまに


菅家
菅原道眞。貴族、学者。宇多天皇に重用されて寛平の治を支え、醍醐朝で右大臣に昇った。しかし、左大臣藤原時平に讒訴(ざんそ)され、大宰府へ左遷され現地で没した。

現代語訳
今度の旅は急いで発ちましたので、神さまに捧げる幣(ぬさ)をご用意することができませんでした。この手向山(現在の京都府と奈良県の県境の山)の錦織のように美しい紅葉を御幣の代わりに捧げますので、どうかお心のままにお受け取りください。

文法・語
「たび」-「旅」と「度」の掛詞
「幣(ぬさ)」-色とりどりの木綿や錦、紙を細かく切ったもの。道中の安全を祈るため用いた
「取りあへず」-「取りそろえる暇がない」という意味
「まにまに」-副詞で「~するままに任せる」の意
※二句切れ


手向(たむけ)山 MAP
山城国(現在の京都府)から大和国(現在の奈良)へと行くときに越す山の峠を指し、さらに「神に幣を捧げる」という意味の「手向(たむ)け」が掛けてある