92 わが袖は潮干に見えぬ沖の石の 人こそ知らねかわく間もなし


女流歌人。女房三十六歌仙。父は源頼政。母は源斉頼の娘。

現代語訳
私の袖は、干潮の時にも海に没して見えない沖の石のように、誰にも知られることもなく、涙に濡れて乾く間もない。

文法・語
「が」―連体修飾格の格助詞
「袖」―「沖の石」にたとえている
「潮干」―引き潮
「に」―時を表す格助詞
「見え」―ヤ行下二段の動詞「見ゆ」の未然形
「ぬ」―打消の助動詞「ず」の連体形
「石の」―「の」は、比喩の格助詞
「人」―世間の人
「こそ」―強意の係助詞
「ね」―打消の助動詞「ず」の已然形で「こそ」の結び。「こそ…已然形」で逆接を表す
「も」―強意の係助詞