65 恨みわび干さぬ袖だにあるものを 恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ


女流歌人。中古三十六歌仙、女房三十六歌仙。摂津源氏但馬守頼光の養女。母は能登守慶滋保の娘。

現代語訳
恨みに恨みぬいて、ついには恨む気力すら失って、涙に濡れた袖が乾く暇もありません。そんな涙で朽ちそうな袖さえ惜しいのに、恋の浮名で朽ちてしまうであろう私の評判がなおさら惜しいのです。

文法・語
「わび」-バ行上二段活用の動詞「わぶ」の連用形で、~する気がなくなるの意
「ほさぬ」-“ほさ+ぬ”で干さない。(涙で)濡れたままにしているの意
「だに」-軽いものをあげて重いものを類推させる副助詞で、~でさえもの意
「ものを」-逆接の接続助詞で、~のにの意
「に」-原因・理由を表す格助詞
「な」-完了の助動詞で強意を表す
「む」-推量の助動詞の連体形
「名」-評判
「こそ」-強意の係助詞
「惜しけれ」-形容詞の已然形。「こそ」の結び
※『後拾遺集』の詞書に「永承六年、内裏歌合に」とある