40 忍ぶれど色に出でにけりわが恋は ものや思ふと人の問ふまで
平兼盛
歌人。三十六歌仙。父は光孝天皇の曾孫。従五位上・駿河守。「天徳内裏歌合」における壬生忠見との対決が有名。
現代語訳
心に秘めてきたけれど、わたしの恋心は顔色に出るまでになってしまいました。何か物思いをしているのではと、人に尋ねられてしまうほどに。
文法・語
「しのぶれ」-バ行上二段の動詞「しのぶ」の已然形で、人目につかないようにする・他人に気づかれないようにするという意
「ど」-逆接の確定条件を表す接続助詞
「色」-顔色
「出で」-ダ行下二段の動詞「出づ」の連用形
「けり」-今初めて気づいたことを表す詠嘆の助動詞
「物思ふ」-恋の物思いをすること
「や」-疑問の係助詞
「思ふ」-ハ行四段の動詞「思ふ」の連体形で「や」の結び
「と」-引用を表す格助詞
「人」-自分と恋愛の対象女性以外の第三者。ただし、この歌は、技巧を競う歌合で詠まれたものであり、恋愛対象も第三者も架空の人物
「の」-主格の格助詞
「まで」-程度を表す副助詞。「色に出にけり」にかかる倒置法
※二句切れ・倒置法
※天暦の御時の歌合(天徳内裏歌合)で「恋」を題に詠まれた歌(壬生忠見〈41番〉の歌との対決)