33 ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ


紀友則
歌人・官人。紀貫之の従兄弟。官位は六位・大内記。三十六歌仙の一人。

現代語訳
こんなに日の光がのどかに降りそそぐ春の日に、なぜ桜の花は落ち着かなげに散ってしまうのだろうか。

文法・語
「ひさかたの」-「光」にかかる枕詞。ほかに、「天・日・月・空・雲・雨」などにかかる
「のどけき」-形容詞「のどけし」の連体形
「光のどけき」-「春の日」を修飾する連体修飾格
「静心なく」-「散るらむ」を修飾する連用修飾格となり「落ち着いた心がなく」の意。「のどけき」と「静心なく」が対照されている
「の」-主格の格助詞
「らむ」-原因推量の助動詞