37 白露に風の吹きしく秋の野は つらぬきとめぬ玉ぞ散りける


文屋朝康
歌人。六歌仙・中古三十六歌仙。従六位下・大舎人大允。

現代語訳
(草葉の上に落ちた) 白露に風がしきりに吹きつけている秋の野原は、まるで糸に通してとめてない玉が、美しく散り乱れているようではないか。

文法・語
「白露」-葉の上についた露が白く光るさまを強調した表現
「に」-「吹きしく」という動作の対象を表す格助詞。「吹きしく」は、しきりに吹くの意。「白露に風の吹きしく」で「秋の野」にかかる連体修飾格
「は」-強意の係助詞
「ぬ」-打消の助動詞「ず」の連体形で「~ない」の意
「玉」-真珠を貫いて紐でとめていないことを表す。「白露」を「玉」に見立てている。平安時代に頻繁に用いられた表現
「ぞ」-強意の係助詞
「ける」-詠嘆の助動詞「けり」の連体形で「ぞ」の結び