17 ちはやぶる神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは


在原業平朝臣
歌人・公卿。平城天皇の孫。阿保親王の五男。従四位上・蔵人頭・右近衛権中将。六歌仙・三十六歌仙の一人。『伊勢物語』の作者と古くからみなされてきた。

現代語訳
神様がこの世界を治めていた時代にも、聞いたことがありません。竜田川一面に紅葉が散り敷かれ、水を真っ赤に染め上げているなんて。

文法・語
「ちはやぶる」-「神」にかかる枕詞。「いち=激い勢いで」「はや=敏捷
 に」「ぶる=ふるまう」という言葉を縮めたもの
「神代」-神々の時代。不思議なことが多々起きたとされる
「ず」-打消の助動詞の終止形。二句切れの倒置法で強調ている
「からくれなゐ」-「唐(から)・呉(くれ)の藍」。「唐」は、唐伝来という意もあるが、単なる美称としても用いられる。「呉の藍」は、鮮やかな紅色
「に」-変化の結果を表す格助詞
「くくる」-「括り染め(絞り染め)」にするという意。主語は「竜田川」で擬人法
「とは」-上の句の「神代も聞かず」につながる倒置法

竜田川 MAP
歌枕。生駒山を源流とする紅葉の名所。現在の奈良県生駒郡斑鳩町竜田にある