16 立ち別れいなばの山の峰に生ふる まつとし聞かば今帰り来む


中納言行平
歌人・公卿。平城天皇の第一皇子である弾正尹・阿保親王の次男(または三男)。在原業平の兄。正三位・中納言。

現代語訳
あなたと別れて因幡へ赴任して行っても、稲葉山の峰に生えている松ではないが、待っていると聞いたならば、すぐに帰ってこよう。

文法・語
「たち」-接頭語
「いなば」-「往なば(行ってしまったならの意味)」と「因幡(稲葉・稲羽)」の掛詞。鳥取市東部。「往なば」は、「動詞ナ変の未然形+接続助詞“ば”」で順接の仮定条件
「まつ」-「松」と「待つ」の掛詞
「し」-強意の副助詞
「聞かば」-「動詞四段の未然形+接続助詞“ば”」で順接の仮定条件
「む」-意志の助動詞