61 いにしへの奈良の都の八重桜 けふ九重に匂ひぬるかな


女流歌人。大中臣輔親の娘。高階成順に嫁ぐ。中古三十六歌仙、女房三十六歌仙の一人。

現代語訳
かつて都のあった奈良の八重桜が、今日は宮中にひときわ美しく咲き誇っているではありませんか。

文法・語
「奈良」-元明天皇による和銅3年(710)の遷都から約70年間にわたって帝都であった平城京
「八重桜」-八重咲きの桜で、ソメイヨシノより開花時期が遅い
「けふ」-今日。「いにしへ」との対照
「九重」-宮中。「八重」との対照
「にほひ」-ハ行四段の動詞「にほふ」の連用形
「ぬる」-完了の助動詞「ぬ」の連体形
「かな」-詠嘆の終助詞