86 嘆けとて月やはものを思はする かこちがほなるわが涙かな


武士・僧侶・歌人。 俗名は佐藤義清。 家集に『山家集』(六家集の一)『山家心中集』(自撰)『聞書集』、その逸話や伝説を集めた説話集に『撰集抄』『西行物語』があり、『撰集抄』の作者ともいわれる。

現代語訳
嘆けといって月が私に物思いをさせるのだろうか。いや、そんなことはない。にもかかわらず、まるで月のせいであるかのように、こぼれ落ちる私の涙なのだ。

文法・語
「嘆けとて」-「と」は内容を示す格助詞。嘆けと言っての意
「やは」-反語の係助詞
「する」-使役の助動詞「す」の連体形で、「やは」の結び
「かこち顔」-恨みに思う顔つき。「かこち顔なる」で「(月に)恨みを持つかのような」の意を表す形容動詞
「かな」-詠嘆の終助詞
※三句切れ