90 見せばやな雄島の海人の袖だにも 濡れにぞ濡れし色は変はらず


歌人。女房三十六歌仙。父は藤原信成。母は従四位式部大輔菅原在良の娘。

現代語訳
涙に濡れて色の変わったわたしの袖をお見せしたいものですよ。雄島の漁師の袖ですら濡れに濡れても、わたしの袖のようには色は変わらないでしょうに。

文法・語
「見せ」-下二段の動詞「見す」の未然形
「ばや」-願望の終助詞
「な」-詠嘆の終助詞。「見せばやな」で、見せたいものだなあの意
「あま」-「海人・海女」で漁師のこと
「だに」-軽いものを取り上げて重いものを類推させる副助詞で、~でさえもの意
「も」-強意の係助詞
「ぬれ」-ラ行下二段の動詞「ぬる」の連用形
「に」-同じ動詞の間に入れて表現を強調する格助詞
「ぞ」-強意の係助詞
「し」-過去の助動詞「き」の連体形で「ぞ」の結び
「色」-袖の色
「は」-区別を表す係助詞
※初句切れ、四句切れ
※この歌は本歌取の歌であり、本歌は源重之の「松島や 雄島の磯に あさりせし あまの袖こそ かくはぬれしか」である。現代語訳は「松島の雄島の磯で漁をしていた漁師の袖が、私の袖が涙で濡れているのと同じように、ひどく濡れていた」である

雄島 MAP
宮城県の松島湾にある島。歌枕。