57 めぐり逢ひて見しやそれとも分かぬ間に 雲隠れにし夜半の月影


女性作家、歌人。『源氏物語』の作者と考えられている。中古三十六歌仙、女房三十六歌仙。藤原為時の娘。一条天皇の中宮・藤原彰子に仕えている間に、『源氏物語』を記した。

現代語訳
久しぶりにめぐり会ったのに、それがあなたかどうかも分からない間に帰ってしまうなんて、まるで雲間にさっと隠れてしまう夜中の月のようではありませんか。

文法・語
「し」-過去の助動詞「き」の連体形
「や」-疑問の係助詞で、結びは省略
「それ」-月。実際は、友人を重ねている
「と」-引用の格助詞
「も」-強意の係助詞
「わか」-カ行四段の動詞「わく(分く・別く)」の未然形
「ぬ」-打消の助動詞「ず」の連体形
「に」-時を表す格助詞
「雲がくれ」-「月が雲に隠れる」の意であるが、実際は、「友人がいなくなる」ことを表す
「に」-完了の助動詞「ぬ」の連用形
「し」-過去の助動詞「き」の連体形
「夜半」-夜中
「かな」は、詠嘆の終助詞
※『新古今集』では「夜半の月かげ」となっている。「めぐる」と「月」は縁語
※この歌は詞書によれば歌を見る限り“月”が主題であるように思えるが、実際は、幼馴染とのつかの間の再会を詠っている