85 夜もすがらもの思ふころは明けやらぬ ねやのひまさへつれなかりけり


僧・歌人。父は源俊頼。東大寺の僧。

現代語訳
つれないあなたのことを想って夜通しもの思いに沈むこの頃、夜がなかなか明けないので、いつまでも明け方の光が射し込まない)寝室の隙間さえも、つれなく思えるのです。

文法・語
「すがら」-最初から最後までの意。「夜もすがら」で一晩中
「物思ふ」-恋の物思いをする
「ころ」-状態が継続していることを示す
「明けやら」-下二段の動詞「明く」の連用形+“すっかり~する”の意を表すラ行四段の補助動詞「やる」の未然形
「で」-打消の接続助詞
「閨」-寝室
「ひま」-隙間
「さへ」-添加の副助詞
「つれなかり」-冷淡だ、そっけないを表すク活用の形容詞「つれなし」の連用形
「けり」-詠嘆の助動詞