83 世の中よ道こそなけれ思ひ入る 山の奥にも鹿ぞ鳴くなる


公家・歌人。藤原俊忠の子。正三位・皇太后宮大夫。『千載和歌集』の編者。

現代語訳
世の中なんて、どうにもならないものだ。(世俗を離れるべく)入り込んだこの山奥でも、(辛いことがあったのか) 鹿が悲しげに鳴いているようだ。

文法・語
「よ」-詠嘆の間投助詞
「道」-方法・手段の意
「こそ」-強意の係助詞
「なけれ」-ク活用の形容詞「なし」の已然形で、「こそ」の結び
「思ひ入る」-思い込む。「入る」には山に「入る」意味が重ねられている
「に」-場所を表す格助詞
「も」-並列を表す係助詞
「ぞ」-強意の係助詞
「なる」-推定の助動詞「なり」の連体形で、「ぞ」の結び
※二句切れ