53 嘆きつつひとり寝る夜の明くる間は いかに久しきものとかは知る


右大将道綱母・右大将道綱母
歌人。藤原兼家の妻の一人で道綱の母。『蜻蛉日記』の作者。

現代語訳
(あなたが来てくださらないことを) 嘆き哀しみながらひとりで夜をすごす私にとって、夜が明けるのがどれほど長く感じられるものか、あなたはご存知でしょうか。ご存じないでしょうね。

文法・語
「つつ」-反復・継続を表す接続助詞。「~ながら」の意
「寝(ぬ)る」-動詞「寝(ぬ)」の連体形
「の」-主格の格助詞。「(夫が訪れず)一人で寝る夜が」の意
「は」-強意の係助詞
「かは」-反語を表す複合の係助詞
「いかに」-程度をたずねる疑問の副詞で「どれくらい」の意
「と」-引用の格助詞
「かは」-反語の係助詞
「知る」-ラ行四段の動詞「知る」の連体形で、「かは」の結び
※『拾遺集』の詞書には「入道摂政(兼家)まかりたりけるに、門を遅く開けければ、『立ちわづらひぬ』と言ひ入れて侍りければ」とあり、『蜻蛉日記』には夫に他の妻ができたことを知った作者が、その来訪を知りながら決して門を開けようとせず、新しい妻の家へ立ち去ってから、しおれかけの菊とともに贈った歌とある