73 高砂の尾の上の桜咲きにけり 外山のかすみ立たずもあらなむ


公卿、儒学者、歌人。大学頭・大江成衡の子。正二位・権中納言。

現代語訳
遠くの山の峰の桜が咲いたようだ。手前の山の霞よ、どうか立たずにいてほしい。美しい桜がかすんでしまわないように。

文法・語
「高砂」-砂が高く盛り上がった場所 「尾の上」-峰の上>
「に」-完了の助動詞「ぬ」の連用形>
「けり」-初めて気付いたことを表す詠嘆の助動詞>
「外山」-深山(みやま)・奥山の対義語で、人里近い山。この場合、桜が咲いた遠くの高い山の手前にある低い山>
「霞」-空気中に浮かぶ小さな水滴やちりなどによって遠くのものが見えなくなる現象で、春の季語(秋は霧)>
「ず」-打消の助動詞「ず」の連用形>
「も」-強意の係助詞>
「なむ」-他者に対する願望を表す終助詞>
※三句切れ