94 み吉野の山の秋風さよ更けて ふるさと寒く衣打つなり


公家・歌人。刑部卿・難波頼経の次男。二条または明日香井を号す。飛鳥井家の祖。

現代語訳
吉野の山から秋風が吹き、夜もふけ、都があったこの里は寒々しく、衣を打っている砧(きぬた)の音が聴こえる。

文法・語
「み」―美称の接頭語
「さ」―接頭語
「ふるさと」―古里で古都の意。かつて吉野には離宮があった
「寒く」―ク活用の形容詞「寒し」の連用形でありことから、「ふるさと」の述語であり、「衣うつなり」にかかる修飾語でもある
「衣うつ」―衣を打って布を柔らかくしたり、光沢を出したりすること
「うつ」―タ行四段活用の終止形であることから、「なり」は伝聞推定の助動詞「なり」の終止形

吉野
桜の名所として名高い今の奈良県吉野郡吉野町。