70 寂しさに宿を立ち出でてながむれば いづくも同じ秋の夕暮れ


僧・歌人。比叡山(天台宗)の僧で祇園別当となり、その後大原に隠棲し、晩年は雲林院に住んだといわれている。

現代語訳
寂しさに耐えかねて家を出てあたりを見渡すと、どこも同じように寂しい秋の夕暮れがひろがっていた。

文法・語
「に」-原因・理由を表す格助詞
「宿」-自宅の草庵
「ながむれば」-動詞の已然形+接続助詞“ば”で順接の確定条件であり、見渡すとの意
「も」-強意の係助詞
「同じ」-形容詞の連体形の特殊な形
「秋の夕暮れ」-体言止め。余韻を残し情緒を持たせる表現方法として用いられている。定家の編纂した新古今集の時代に流行した結句(むすびのことば)