76 わたの原漕ぎ出でて見ればひさかたの 雲居にまがふ沖つ白波


公卿。摂政関白太政大臣・藤原忠実の長男。

現代語訳
大海原に船で漕ぎ出し、ずっと遠くを眺めてみれば、かなたに雲と見間違うばかりの沖の白波が立っていたよ。

文法・語
「わたの原」-広々とした大海原のこと
「見れば」-マ行上一段の動詞「見る」の已然形+接続助詞“ば”で、順接の確定条件
「ひさかたの」-「雲居」にかかる枕詞。「天・空・日・月・光」などにもかかる
「雲居」-雲のいるところ
「まがう」-区別がつかなくなる
「つ」-上代の格助詞で、“の”の意
※体言止め
※『詞花集』の詞書によると、この歌は崇徳天皇の御前で「海上遠望」を題に詠んだ歌である