64 朝ぼらけ宇治の川霧たえだえに あらはれわたる瀬々の網代木


公家・歌人。権大納言・藤原公任の長男。中古三十六歌仙。

現代語訳
ほのぼのと夜が明けるころ、宇治川に立ちこめた川霧が切れ切れに晴れてきて、現れてきたのが瀬ごとに打ち込まれた網代木ではないか。

文法・語
「朝ぼらけ」-夜が明けて、ほのぼのと明るくなる時分。暁(あかつき)→曙(あけぼの)・東雲(しののめ)→朝ぼらけの順で明るくなる
「宇治」-現在の京都府宇治市。瀬田川が、宇治川となり、木津川・桂川と合流して淀川となって、大阪湾に到る
「わたる」-網代木が現れる、見える状況が時間的・空間的に広がるさまを表す
「瀬々」-あちこちの瀬。川の水深が浅い部分
「網代」-網の代わりに木や竹を編んで作った漁具。それを立てる杭が網代木
※『千載集』の詞書によると「宇治にまかりてはべりけるときよめる」とある